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【おすすめ韓国映画】『パラサイト 半地下の家族』ネタバレレビュー

 

 アカデミー賞受賞で話題となった韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。Netflixで配信されていたので観てみたのですが、予想を超える面白さでした。余韻の重たさにひたりながら、レビューしていきたいと思います。

 

 

あらすじ:

 半地下で暮らす貧しい一家が裕福な家族の使用人として豪邸に入り込み、寄生に成功する。豊かな生活のおこぼれにあずかっていたところ、元使用人がこの家に隠されたある秘密を暴露し、事態は一変する。貧しさとはどういうことか、全人類に現実をつきつけた問題作。

 

 

 アカデミー賞受賞で話題になった当時の評判から、どこか純文学的な、シリアスで重たい話という先入観を持っていました。だから気合を入れて観始めたのですが、序盤は意外にもコミカルで笑える展開がたくさん。

 主人公一家が金持ちのキム一家の使用人を次々と追い出し、代わりに自分たちが使用人として豪邸に出入りするようになる場面など、あまりの快進撃に胸がスッとしさえしました。

 

 ……が、序盤のコミカルなシーンから一変、後半は怒涛の勢いで現実をつきつけられます。

 

 キム一家がキャンプに出かけた日、我がもの顔で豪邸を占領し、豪華なお風呂や料理を楽しんでいた主人公たちのところへ、キム家の元使用人がやってきます。彼女はこの家の誰も知らない地下へと急ぎます。そこにはなんと、彼女の夫が隠れて生活していたのです。彼女は使用人という立場を利用して、キム一家の目を盗み、食べ物などをくすねては地下の夫に運んでいたのでした。

 彼女はこのことを秘密にするよう懇願しますが、主人公一家はこれを拒否。乱闘になってしまい、元使用人は死亡、その夫も怪我を負ってしまいます。

 

 雨により急遽帰宅してきたキム家の豪邸からほうほうの体で逃げ出してきた主人公一家。くしくも彼らの半地下の家は大雨で浸水し、とても住める状態ではなくなっていました。

 大雨にもかかわらず平穏に眠りにつくキム家の人間と、体育館に避難し、他人と雑魚寝をする主人公一家の対比がなんとも残酷です。

 

 豪邸に出入りし、裕福な生活の表面を味わうことができたとしても、そこに住む人々と貧乏人の自分たちとの間にははっきりと境界線が引かれている。そんな現実をまざまざと突きつけられる瞬間です。

 

 後日、キム家のパーティーに元使用人の夫がナイフを持って乱入し、大騒ぎになります。家庭教師として参加していた主人公の妹が胸を刺され、慌てて駆け寄る父。そんな彼に近づこうとしたキム家の父親は、とっさに鼻をつまむのです。

 

 主人公の父は激昂し、キムを刺して地下室へと逃げ込みます。明るいパーティー会場から地下へと続く階段を駆け下りる絶望的な姿がとても印象的でした。

 

 映画の中で、キム家と半地下の家族との対比は何度も繰り返し描かれますが、この時ほどはっきりと両者の住む世界が異なるものとして現れたことはありません。

 二つのかけ離れた世界の境界線を飛び越える唯一の手段が、死という平等さだったのかもしれません。

 

 映画はすべて「半地下の家族」の目線で描かれるため、キム家の暮らしはどこか曖昧で、生活感に乏しく感じられます。裕福な家庭にもそれなりの苦労や悩みがあるでしょうし、裕福が必ずしも幸福に結びつくとは限りませんが、「半地下の家族」の目線からはそういった事情は見えないのです。

 しかし、この映画を見る人のほとんどは「半地下の家族」側の人々ではないでしょうか。だからこそ、こんなに多くの共感を呼んだのでしょう。

 

『パラサイト』を観ながら、思い出した光景がありました。

 私は会社員ですので、毎日決まった時間に家を出て、満員電車に乗って出勤しています。朝、会社に着くと、玄関にリムジンが停まっていて、スーツを着込んだ運転手が社長のためにドアを開けるのを何度か目にしたことがあります。

 人を使う側と使われる側。

 私も裕福な人に寄生する人間の一人なのかもしれない。と、そんなことを考えてしまいました。

 

 

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